Kyojiのよろずひとりごと

作曲家、編曲家、ピアニストそして製作会社の経営者ですが、ここでは音楽以外の社会一般のことの雑感について書きます。

大前研一氏の記事「世界から尊敬されるドイツ、警戒される日本」を読

昨年くらいから日本社会の右傾化について当ブログでも警鐘をならしていた。まともな感覚の人間なら昨今の日本は根本的にどこかがおかしい、と感じるのが普通だと思う。

そんな中だいぶ前の記事のようだが、大前研一氏の記事を読んだ。この人のいうことはどちらかというと共感しないことの方が多いんだが、この記事だけは全面的に同意する。

■世界から尊敬されるドイツ、警戒される日本
http://president.jp/articles/-/10282

参院選自民党の圧勝劇で終わった。「ねじれが解消できてよかった」と喜ぶのは、自民党公明党ぐらいで、中国、韓国は無論のこと、安倍首相を危険人物に分類し始めているアメリカからも歓迎の声は聞こえない。


「失われた20年」で日本の国際的なプレゼンスは低下の一途を辿ってきたが、先の民主党政権と日本の右傾化を象徴する安倍政権の登場で、アメリカにまで警戒心を抱かれるようになってしまった。それは同じ敗戦国として戦後復興と高度成長を果たしながら、今なお世界から尊敬されるドイツとは対照的だ。


日本でバブルが弾けた20年以上前、ドイツは東西ドイツの統一によって重い荷物を背負った。旧西ドイツ国民の負担は240兆円を超えたという試算もある。当時の東ドイツの失業率は20%近く、1人当たりGDPは西ドイツと10倍以上の開きがあった。それが今やドイツ全体の失業率は4%台で、GDP格差は0.72倍まで縮まっている。この20年で東の吸収に完全に成功したと言っていい。


毎年恒例のBBC英国放送協会)の国際世論調査によれば「世界によい影響を与えている」と、好感度が最も高い国はドイツ。昨年1位だった日本はカナダ、イギリスに次いで4位に後退した。ドイツの影響力を否定的にとらえた周辺国は金融支援の条件としてメルケル首相から厳しい緊縮財政を求められたギリシャぐらいだが、日本は中国と韓国から「世界に悪い影響を与えている」と否定的に評価された。周辺国との軋轢がそのまま数字に表れた格好だ。

敗戦国から経済大国へ、戦後同じような軌跡を描いてきた日本とドイツだが、この20年で、大きく差が開いたように感じる。なぜドイツは統合の負荷を乗り越えて国際的なプレゼンスを保持し続け、周辺国とうまく付き合っていられるのか。いくつか理由があると私は思う。

全部引用するわけはいかないので、このあとを要約すると、大前氏はドイツはアメリカ型の連邦式にしたことによって各地方に自立心や自主性が生まれ、それが成功の原因と分析する。
一方で日本は天皇制と官僚機構がほぼそのまま継続され、中央集権的な体制が維持された。それは高度成長期には機能したものの、高度成長期が終わるとそれは足かせにしかならないと指摘する。

そして何よりも次の部分に一番共感した。

周辺国と国境を接しているドイツは領土問題を数多く抱えている。しかし300年も戦ったフランスのアルザス・ロレーヌ地方を「ドイツの領土だ」と主張しないし、ポーランドとの国境問題でも自己主張をしない。今ではロシアの飛び地となっているカリーニングラード(旧称ケーニヒスベルク)にはドイツ語を話す市民が40万人もいて歴史的にも人道的見地からもドイツ領を主張できるはずだが、ドイツ人は領土問題を蒸し返すようなことを絶対にしないのだ


そしてロシアの対独戦勝記念日やポーランド終戦記念日には毎年、ドイツの首相か大統領が訪問して戦争犠牲者の碑に献花する。過去の戦争に対する深い反省とヨーロッパ連帯の大切さを、指導者が自ら行動で示す。一方で、経済的な負担はEUの誰よりも進んで負担する。だから周辺国からも「もっとも頼りになる国」として尊敬される。こうした教育を受けて育ったドイツ人、またその微妙な外交センスを理解しているマスコミは、安倍首相のような周辺諸国を刺激する言動を取る指導者を許容しないだろう。


日本人の右傾化は最近の20年間の閉塞状況の裏返しではないか、と思われる。日本では戦争の総括をする暇もなく戦後の大躍進が始まってしまったし、アジアにおける日本の将来像を描ききる指導者も出てきていない。「能ある鷹は爪を隠す」を体現して成功しているのがドイツで、落日の劣等感の裏返しで、爪をむき出しにしているのが日本なのではないだろうか?

特に最後の文章はまさに今の日本の状態をひとことですべて表現している。ヘイトスピーチを連発するネトウヨやいわゆる在特会とかいう連中(本来なら論じる価値すらない連中だ)そして維新の会のような荒唐無稽な右翼政党が支持されているのは、いま日本人が抱いている劣等感の裏返しだろうと思う。

過去同じような時代があった。そう第二次大戦時代の日本である。欧米に対する劣等感があの大戦を結果的に起こさせてしまった。だからこの傾向は非常に危険な兆候なのである。今後の日本社会の行方に重大な懸念を持たざるを得ない。

だからこういう連中が社会に対して一定の影響力を持たせていること自体が非常にみっともないことだし世界に対して恥ずかしいことである。

無論周辺諸国、とりわけ中国政府や韓国政府に問題がないとはいわない。しかし向こうに問題があるのならドイツのような高貴な精神でものごとを運べばその評価は世界がおのずから下す。中国国内の反日破壊活動で中国がどれだけ世界的に評価を下げたが考えてみるがいい。ヘイトスピーチや安価な国粋主義に傾倒するのは自らのレベルを先方に合わせる、同じレベルに自らを貶める行為でありそれは国際的にも決して尊敬はされない。

確かに日本はバブル以降の二十年、いまだに自分を取り戻していない。しかしその原因は我々日本人にあるのだ。外国人へのヘイトスピーチを発してもなにも解決しない。

劣等感をなくしたいのなら、ドイツに学ぶべきだろう。高貴な精神で望めば日本は警戒されるのではなく尊敬される。「日本を取り戻す」安倍総理のいう戦前の日本を取り戻すのではなく高貴な日本を取り戻す、というロジックに入るべきである。