Kyojiのよろずひとりごと

作曲家、編曲家、ピアニストそして製作会社の経営者ですが、ここでは音楽以外の社会一般のことの雑感について書きます。

軍師官兵衛ー坂口安吾の描く官兵衛と秀吉

軍師官兵衛ーついに晩年殆ど狂人に近かった秀吉が他界しました。また秀吉と官兵衛の最後の会見、実に見ごたえがありました。前回の「秀吉」の時と比べ、人間味や狂人ぶりをいかんなく演じた竹中直人、そしてそれに一歩も引けをとらない岡田准一の官兵衛、この二人の演技は称賛に値すると思います。

さていよいよ佳境に入った官兵衛、ここでおそらく脚本の下地になっているだろう坂口安吾の官兵衛を主役とした小説、「二流の人」については当ブログでも既に書きました。


坂口安吾ー白痴・二流の人 (角川文庫)

この小説は官兵衛が頭が切れすぎるために、秀吉や家康に警戒され手柄に見合った恩賞を手にすることができなかった悲運の武将という、まさにいまの官兵衛のステレオタイプの人物像が描かれています。

史実では秀吉と官兵衛との対立を示す文書は残されていませんが、この小説では官兵衛だけでなく秀吉、家康の人物像が痛快に描かれており、短編ではありますが歴史小説の中では好きな方です。

しかしもう1つ秀吉をテーマとした坂口安吾の小説があります。それは秀吉の晩年の心境を描いた作品狂人遺書 です

豊臣秀吉の独白という形で描かれ、なぜ秀吉が利休の切腹から文禄慶長の役、そして甥の秀次とその一族の惨殺という凶行に及んだ時期を人間としての秀吉が葛藤している様子を一人の人間としての秀吉の側から描いており、坂口安吾の最晩年の作品ということもあり、何か鬼気迫るものを感じます。

坂口安吾ー狂人遺書

「誰れにも解って貰えなかった秀吉の哀しさと、バカバカしいほどの野心とを書くんだよ」

 執筆前、坂口安吾は編集者にそう意気込みを語ってきかせたそうです。虚勢と見栄に凝り固まって、出口を見つけられなくなった英雄。そこに人間が人間であることの悲哀がある。むなしく、恐ろしい、けれども、いとおしい──、そんな姿が描かれています。官兵衛の竹中直人版、秀吉と合わせてご一読されることをお勧めいたします。

坂口安吾はこの二作以外に「二流の人」とは別に官兵衛のことを描いた黒田如水それと信長を描いた織田信長があります。それぞれの人間性に鋭く切り込んだ秀作といっていいでしょう。

坂口安吾 1906-1955

小説家としても好きな作家で、作風は決して親しみやすくはないかもしれませんが、是非一読をお勧めしたい作家です。