Kyojiのよろずひとりごと

作曲家、編曲家、ピアニストそして製作会社の経営者ですが、ここでは音楽以外の社会一般のことの雑感について書きます。

ISISによる日本人人質殺害事件に見る左右両論の違和感

イスラム国(ISIS)」による人質となった湯川さん、後藤さんの件は最悪の結末を迎えてしまった。特に後藤さんは一時生還できるのでは、という期待があっただけに残念であると同時に悔しい。

遺族の方には心からお悔やみを申し上げ、ご冥福をお祈り申し上げます。

今回の事件の成り行き、非常に私から見ても嫌だった。勿論「イスラム国(ISIS)」の常軌を逸した残虐非道さ、卑劣さをみても「テロとの戦い」は状況がよくなるどころか悪化していることを示している。

それらもこの事件に対する悪印象ではあるが、もう1つ絶えず違和感を持っていたのはリベラル派、保守派左右双方の今回の事件に対する論調である。

正直どれを見ても日本の左右双方とも議論の底は浅い、と思わざるを得ないのだ。

1.湯川さん、後藤さんに対する安易な「自己責任論」

これについては私よりも古谷 経衡氏の記事が私の見解をほぼ述べているのでそちらを参照されたい。
■「自己責任論」で中世に退行する日本
http://blogos.com/article/104196/

今回の日本人二人が「イスラム国」に惨殺された事件から「日本もテロの対象」になったことでいわゆるシリアやイラクのような国でなくても海外渡航してテロに巻き込まれる、という事態を想定しないといけない。つまり「自己責任」攻撃をしている連中が、会社員として海外出張とかした場合、テロに巻き込まれ自分が「自己責任」攻撃される可能性があるのだ。

だが「自己責任論」を主張する連中にそんなことなど想像もできない、というのが事実なのではあるまいか。本当にこの想像力のなさ、他人に対する思いやりのなさはどこから来るのだろう、と思うのである。こんな連中がまともな人格の持ち主だなどとは到底思えない

何よりもこいつらには国家、ということ、とりわけ民主国家というものの認識がなさすぎる。

そもそも拉致されたり、邦人がいかなる理由で危険な状況になっても渡航理由などは関係ない。
一人の人間の生命を国家を上げて救うというのが国家の使命であり、そのために我々は税金も払っている。それは日本だけでなく世界の常識である。

そんなこともわからんバカが多すぎる、というのは困ったものだ、

2.リベラル派からの日本がテロの対象になったのは全部安倍のせいだ論

このブログを読んでくださっている方なら私が安部政権に対していかに批判的な人間であるかわかるであろう。そして後程述べるが安部政権はいくつもの失態を犯している。

だがそれを置いたとしてもただ「日本がテロの対象になったのは安倍のせいだ「全部安部が悪い」というのはいささか単純すぎる。

そもそも「イスラム国(ISIS)」は最初から日本を敵とみている。ていうか「イスラム国(ISIS)」にとって全ての先進国は敵である。その証拠に昨年の10月に湯川さん、そして後藤さんを既に拘束していることからも明らかである。今回の安倍訪問の既に日本が「潜在的な敵」とみられており、例の人質の写真も安部のエジプト訪問(これについては後程述べる)のタイミングを見計らったからに過ぎない。何よりも国際的なジャーナリストの支援組織 CPJ(Committee to Protect Journalists)はイスラム国(ISIS)についてこう書いている。

そもそもイスラム国(ISIS)はシリアを含むどこの国のジャーナリストだということは関係ない。必要なら拘束拉致し、身代金を取るか殺すかをどこの国のジャーナリストだろうが平気で行う。イスラム国(ISIS)に関心があるのは支配地域の拡大だけ。そのためこの地域に入るジャーナリストの身の安全には深く憂慮している

■CPJ condemns murder of Japanese journalist Kenji Goto(CPJは後藤健二さんの殺害を強く非難する)
https://cpj.org/2015/01/cpj-condemns-murder-of-japanese-journalist-kenji-g.php

よってこの場合は、誰のせいだ、というより「どうやったら後藤さんを救えるのか」という具体的方法を論じるべきである。しかし残念ながら私の知る範囲ではリベラル派の方からそういった建設的な議論が出てきているようには見えなかった。非難合戦なら誰でもできる。勿論安部の対応方法はかなり問題があるが、私はリベラル派の方から「全部安部のせいだ」以外の言質を聞くことができなかったのが残念でならない。

3.安部の行った数々の失態、失政、そして実は本当の「有事」には役に立たないことを露呈した無能ぶり

上記の項を見て私が「安部を擁護している!?」ように見えたかもしれないが冗談じゃない。

さて、どこから始めようか、というくらい今回の安倍政権の対応は酷い
ざっと思いついてもこれだけある。

(1)阪神淡路大震災20周年式典を欠席してまで、日本の軍需産業関係者を帯同して、2人の日本人が拉致拘束されている情報を知りながら中東訪問を強行
一部の報道機関は「俺はついてる、みんなが安部晋三を必要としている」とほくそ笑んで中東訪問した、などという情報が入ってきている。事実だとすれば、愚か、無神経だけでなく、拉致された二人について情報を知りながら中東訪問時には何もしていなかったとすれば、これは人命軽視も甚だしい

(2)テロリストを利する(刺激する)映像を中東訪問時に自ら発してしまったこと
いわずもがな、だがエジプトで日本とよりによってイスラエルの国旗の間で記者会見をしたこと。これでテロリストからすれば「日本をテロの対象にできる」口実を自ら与えたことになる。この場所でいくら人道支援といってもイスラム国(ISIS)にとっては自分たちへの攻撃参加とみなされる。(そもそも「人道支援」ほどテロリストにとって攻撃対象にしやすいものはない)

(3)ドサクサに紛れて「集団自衛権行使」や「改憲」作業を始めようとしたこと
このような「非常時」なら「集団自衛権行使」や「改憲」も国民に支持されやすいだろう、などという下心が見え見えである。実際中東訪問から国会での答弁を見ても国民の世論をそちらに誘導しようと考えているとしか思えない言動を続けていた。

(4)そもそも安部政権に最初から人質2人を救う気があったのか?
繰り返すが湯川さん、後藤さんは昨年の10月―11月にイスラム国に拉致拘束されている。そして外務省を始め日本政府もその事実を把握していた。
では安部は軍需産業を多くを帯同した時に、この人質救出のために果たして動いたのか? 例の国家機密法ではないが秘密時にやったとしても、そのために何か手を打ったとはどうしても思えない。そしてその時期にわざとテロリストだけでなくイスラム教徒全員を刺激するような記者会見を行っている。

どう考えても人質を本気で救出しようと考えていたようには見えない

(5)後藤さん殺害の報を聞いた時に安部の涙

そもそもあれは本当の涙なのか?嘘泣きなのか?
いずれにせよ国家の最高権力者が見せる表情ではない。

本当の涙だとすれば今回の事態を想像できなかった安部の大失態であり、くどいようだが昨年の10-11月拉致されていたことを知りながら、結局何もしなかったに等しい人命軽視の態度は野党だけでなく国民全体が安部首相を糾弾してしかるべきだろう。

また嘘泣きだとしたら、安倍は国民を騙している大嘘つきであることを行動で証明したが、この場面での涙はテロリストに弱みを見せるのと同じだからどちらにせよ最悪の涙である。このことは平時ではいつも威勢のいいことをいう安部は本当の有事には役に立たない人間であることを証明している。

以上、今回の人質事件、ネット上の論調も政府の対応もどれも非常に見ていて嫌だった。こんな嫌な事件は過去記憶にない。

湯川さん、後藤さんの死を無駄にしないためにも我々日本人が真剣に今後について考えなくてはならない事態になったのではないだろうか?